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新型コロナウイルスに立ち向かう歯科治療

新型コロナウイルスについていろいろなことが解明されてきましたが、最近では、歯科、特に歯周病との関係が明らかになってきています。

昨年末に、ドイツのメルケル首相が、『感染対策を徹底せず、経済政策に重きを置いたことが、このような悲惨な結果を招いてしまった』と反省しておりました。次々と出てくる変異株は、人類の生存への脅威になってきています。島国として、守られているはずの日本でも、その火が及んできております。

またインフルエンザと異なり、いろいろな後遺症が認めておりますが、無症状で感染しやすいといわれている20歳未満で起こる小児多臓器炎症症候群といわれる重篤なものも明らかになってきております。
今回は、歯科治療が新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐということを中心に2回に分けてお話ししたいと思っております。


T 新型コロナウイルス感染症と歯科治療

新型コロナウイルスは、ACE2といわれる酵素が関係して細胞内に侵入します。ちょうどウイルスが鍵で、ACE2が鍵穴のようになって。このACE2はいろいろな臓器に分布しており、血圧の調整に関係している酵素です。口腔内にも多数分布しており、舌、歯肉、唾液腺などに多数分布しております。味覚障害が、感染発症に先立ち認められるのは、味覚を掌る舌の感染によるものと考えられています。口腔で感染して、他の組織に感染拡大していくものと考えられています。

新型コロナウイルス感染症の死亡リスクは、細菌感染を伴う敗血症で、本来感染症に対して、その防御機能を担う免疫機構が暴走して、機能不全の状態に陥るためと考えられています。
新型コロナウイルスの表面の構造がスーパー抗原(免疫機構を攪乱させ暴走させる物質)に似ていることが関係していると考えられています。このスーパー抗原は黄色ブドウ球菌が出す毒素です。新型コロナウイルス感染症の重症化は、いわゆるサイトカイニンストームと似ているといわれています。サイトカイニンストームとは、炎症性の物質サイトカイニンなどが過剰に生産され免疫機構が暴走する状態です。

最近では、歯周病が新型コロナウイルス感染症の重症化のリスク因子と考えられているようです。それは歯周病菌の出す毒素がガレクチン3という物質を増産し、そのガレクチン3は、免疫暴走となるサイトカイニンを過剰に発生させるからです。糖尿病にも関係しているようです。このガレクチン3の過剰な増加が新型コロナウイルス感染症を重症化と関連していると考えられているからです。

口腔内には、多種多数の細菌が棲み付いており、重症化を抑えるためには、歯周病菌やスーパー抗原を作り出す黄色ブドウ球菌を減らす口腔清掃、歯周治療の役割が浮かび上がっています。
また、重症化のリスク因子の一つ、糖尿病は、歯周治療で改善されることからも大切なことがお分かりいただけると思います。


U 誤嚥性肺炎

高齢者の方の誤嚥性肺炎は、実は、口腔内の細菌が原因です。誤嚥された歯周病菌により、肺で大量の炎症性サイトカイニンが誘導されます。その結果サイトカイニンストームになれば、新型コロナウイルス感染者では、重症化を招くと考えられています。

従って、口腔清掃は、虫歯や歯周病を防ぐだけでなく、誤嚥性肺炎を防ぐことで、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐことになると考えられます。


V 新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐために

口腔内の感染や誤嚥性肺炎による重症化を防ぐ上で、口腔管理が大切なことがお分かりいただけたと思います。さらに感染の重症化を防ぐために、日常生活で気を付けることを考えてみましょう。

有機物、無機物の区別なく、地上の物質は活性酸素(酸素の活性化された状態)によって、酸化されます。老化、癌、いろいろな疾患が、この酸化というストレスにさらされたことにより起こると考えられています。

地上の生き物には、この酸化によるダメージ(酸化ストレス)を軽減するための酵素(SOD)を備えていますが、年齢とともに減少してしまいます。そこでこの酸化ストレスを少しでも軽減するために、抗酸化食品の利用が大切ではないでしょうか。

抗酸化食品には、ビタミン類(A.C.D.Eやカロチノイド)、ポリフェノール類、Nrf2と言って酸化ストレスの対応に関係するものを含むものがあります。青じそ、ブロッコリー、大豆、緑茶、オイスターなどがNrf2を多く含む食品です。またミネラルの亜鉛や銅も抗酸化作用を持ちます。このようなものを豊富に含む食品は、インターネットなどで簡単に、調べることができます。
例えば、抗酸化作用を持つ食品、抗がん作用を持つ食品で検索するとヒットします。


W 最後に

新型コロナウイルス感染症は、人の移動、密集状態により拡大します。人がウイルスの孵卵器です。よくスペイン風邪が引き合いに出されますが、スペイン風邪は、第一次世界大戦でアメリカから派遣された1兵士から世界中に蔓延してしまいました。

緊急事態宣言が解除され人の動きが活発化してきています。このような状況で、医療人として、最小限ではありますが、情報を発信させていただきました。

2021/03/23